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皆さんの防災リュックには水、食料、懐中電灯、ラジオなどを入れていただいていると思いますが
……そこに歯ブラシは入っていますでしょうか?
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実は災害時、多くの方が見落としがちなのが口腔ケアです。しかし阪神淡路大震災では、避難所生活を送った方々の中で、震災関連死として報告された死因の中で最も多かったのが肺炎でした。その原因の一つが、お口の中の細菌だったのです。
2026年、南海トラフ地震の30年以内の発生確率は60~90%程度以上と高い状態が続いています。そんな今だからこそ、お口の防災について真剣に考えてみませんか?
なぜ災害時に歯科が重要なのか?見過ごされてきた命のリスク
避難所で起きていた静かな悲劇
1995年の阪神淡路大震災。
あの時、多くの方が避難所での生活を余儀なくされました。そして震災関連死として報告された約922名のうち、肺炎が223人(24%)で最も多かったという報告があります。
誤嚥性肺炎とは何か?
それは口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気管に入り込み、肺で炎症を起こす病気です。普段なら問題にならない程度の菌でも、体力が落ちた状態では命取りになります。
実際に避難所では、こんな状況が生まれていました。
水が貴重で歯磨きができない。入れ歯を洗う余裕もない。疲労とストレスで免疫力が低下している。そんな中、お口の中では細菌が爆発的に増殖していたのです。
データが示す口腔ケアの重要性
東日本大震災では震災直後の肺炎患者が3倍に増加し、熊本地震では呼吸器系疾患(肺炎含む)が死因の28.4%を占めました。
つまり防災とは、非常食や毛布だけの話ではありません。
お口の健康を守ることこそが、災害時の命を守る重要な要素なのです。特に高齢者の場合、口腔内を清潔に保たないと、増殖した口腔内細菌により誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症が増加することが考えられ、口腔ケアが命を守ることにつながります。
災害時に起こりやすいお口のトラブル5つ
それでは具体的に、避難生活ではどんな口腔トラブルが起きやすいのでしょうか?
トラブル1:歯周病の急激な悪化
普段から歯周病がある方は要注意です。
避難所では十分な歯磨きができません。加えてストレスで唾液の分泌が減少します。すると歯周病菌が活発になり、歯ぐきの腫れや痛みが一気に進行するのです。
実際に、震災後の歯科診療では歯周病の急性症状を訴える患者さんが急増しました。
トラブル2:むし歯の進行
避難所では配給される食事が中心になります。
そのため炭水化物や甘いものが多くなりがちです。しかも食後すぐに歯を磨ける環境にはありません。結果として、むし歯が急速に進行してしまいます。
特に子どもたちは、環境の変化によるストレスで夜間の歯ぎしりも増加します。これもむし歯を悪化させる一因となるのです。
トラブル3:入れ歯のトラブル
高齢者にとって深刻なのが入れ歯の問題です。
避難の際に入れ歯を持ち出せなかった。洗浄剤がなくて清潔に保てない。合わなくなった入れ歯で口内炎ができた。こうしたトラブルが続出します。
入れ歯が使えなくなると、食事が十分にとれません。栄養状態が悪化し、体力の低下につながってしまうのです。
トラブル4:口腔乾燥症
災害時はストレスや緊張で唾液の分泌が減ります。
また水分補給が十分にできないことも多いでしょう。その結果、口の中が乾燥してしまいます。唾液には自浄作用があるため、乾燥すると細菌が増殖しやすくなります。
口臭がきつくなり、周囲との関係にも影響が出る場合があります。
トラブル5:顎関節症の悪化
避難所での硬い床での睡眠。
緊張による歯の食いしばり。これらが原因で顎関節症が悪化する方も少なくありません。口が開きにくくなったり、顎に痛みが出たりすると、食事にも支障をきたします。
今日からできるお口の防災準備
では私たちは何を準備しておけばよいのでしょうか?
防災ポーチに入れるべき口腔ケアグッズ
まず基本となるのが歯ブラシです。
厚生労働省も、避難生活では水の不足等により、歯・口・入れ歯の清掃がおろそかになり、特に高齢者では誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を引きおこしやすくなると注意を呼びかけています。
できれば家族分の人数プラス予備を用意しましょう。コンパクトで携帯性の高いものがおすすめです。また水が使えない場合に備えて、口腔ケア用のウェットティッシュも有効です。
入れ歯を使用している方は、入れ歯ケースと洗浄剤を忘れずに。さらに入れ歯の情報を記録したメモも用意しておくとよいでしょう。紛失した際の再製作がスムーズになります。
デンタルフロスや歯間ブラシも、小さいながら重要なアイテムです。
水が少ない時の歯磨き方法
災害時は水が貴重です。
そこで少量の水で効果的に歯を磨く方法を知っておきましょう。まず歯ブラシを濡らす水は極少量で大丈夫です。歯磨き粉も米粒大程度に抑えます。
磨いた後は、30ml程度の水をコップに入れて2〜3回に分けてすすぎます。一度に口に含む量を少なくすることで、水の使用量を最小限にできるのです。
どうしても水が使えない場合は、ガーゼやティッシュで歯の表面を拭くだけでも効果があります。
唾液を増やす簡単な方法
唾液は天然の抗菌剤です。
災害時こそ唾液の力を活用しましょう。そのための簡単な方法が唾液腺マッサージです。耳の下、顎の下、舌の下にある唾液腺を、指でやさしく円を描くようにマッサージします。
また舌を動かす体操も効果的です。舌を上下左右に大きく動かしたり、口の中で円を描くように回したりしてみてください。これだけで唾液の分泌が促進されます。
ガムを噛むことも有効ですから、防災リュックにキシリトール入りガムを入れておくのもよいアイデアです。
うえさか歯科が考える地域密着型の防災歯科とは
大阪府箕面市瀬川にあるうえさか歯科では、日頃から患者さんの口腔健康管理に力を入れています。
うえさか歯科が行っている予防の取り組みについては予防歯科のページをご覧ください。
平時からの予防が災害時の強さになる
当院では、定期的なメンテナンスを通じて患者さんのお口の状態を把握しています。
なぜこれが防災につながるのか?
それは災害前の口腔状態が良好であれば、避難所生活での急激な悪化を防げるからです。歯周病やむし歯を放置せず、普段からしっかり治療しておくこと。これこそが最大の防災対策なのです。
また定期検診では、お口の状態を記録として残します。万が一、避難先で歯科治療が必要になった際、この記録が役立ちます。
災害時の歯科治療の流れと優先順位
もし災害が起きてしまったら、どうすればよいのでしょうか?
まず対処すべき症状とは
災害直後の歯科治療には優先順位があります。
最優先となるのが急性症状への対応です。激しい痛み、腫れ、出血などがある場合は早急な処置が必要です。放置すると全身状態の悪化につながる恐れがあります。
次に優先されるのが、食事に支障をきたす問題です。入れ歯の破損や喪失、歯の破折などがこれに当たります。栄養摂取は生命維持に直結するため、咀嚼機能の回復は重要な課題となります。
一方で、審美的な問題や予防処置は後回しになります。限られた医療資源を効果的に使うための判断です。
応急処置の知識を持っておこう
歯科医師にすぐかかれない状況も想定されます。
そんな時のために、簡単な応急処置の知識を持っておきましょう。例えば歯が痛む場合、患部を冷やすことで痛みを和らげることができます。ただし氷を直接当てると逆効果です。タオルなどで包んでください。
歯が折れたり抜けたりした場合は、できるだけ早く歯科医師の診察を受けることが大切です。抜けた歯は乾燥させないよう、牛乳や生理食塩水に浸けて保管します。
口の中を噛んで出血した場合は、清潔なガーゼで圧迫止血します。
高齢者と子どもの口腔ケア:特に注意すべきポイント
年齢によって、災害時の口腔ケアで注意すべき点は異なります。
高齢者のケアで大切なこと
高齢者は特に誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
そのため口腔内を清潔に保つことが何より重要です。入れ歯を使用している方は、たとえ水が少なくても必ず毎日洗浄しましょう。ティッシュで拭くだけでも細菌の数を減らせます。
また嚥下機能が低下している方は、食事の前に嚥下体操を行うことをおすすめします。首を回したり、深呼吸をしたり、声を出したりする簡単な運動です。これにより誤嚥のリスクを下げることができます。
認知症のある高齢者の場合、環境の変化で口腔ケアを拒否することがあります。無理強いせず、リラックスした雰囲気で声をかけながら行うことが大切です。
子どもの歯を守るために
子どもは環境の変化にストレスを感じやすいものです。
そのストレスから、歯ぎしりや指しゃぶりといった習癖が出ることがあります。できるだけ子どもの不安を取り除き、安心感を与えることが口腔健康にもつながります。
避難所では甘い飲み物やお菓子が配られることも多いでしょう。子どもがそれらを頻繁に口にする場合、むし歯のリスクが高まります。だからこそ、簡単でも歯磨きの習慣を続けることが重要なのです。
乳歯が抜けそうな時期の子どもは、避難所での混乱の中で歯を飲み込んでしまうことがないよう注意が必要です。
よくある質問:防災と口腔ケア
患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:歯ブラシがない時はどうすればいいですか?
A:指にガーゼやハンカチを巻いて歯の表面を拭く方法があります。
これだけでも歯垢をある程度除去できます。また舌で歯の表面をなぞるだけでも、何もしないよりは効果があります。キシリトール入りガムを噛むことでも、ある程度の清掃効果が期待できるでしょう。
ただしこれらはあくまで応急的な方法です。できるだけ早く歯ブラシを手に入れて、通常の歯磨きを再開することが望ましいです。
Q2:水なしで使える歯磨き製品は効果がありますか?
A:水なしで使える液体歯磨きやフォームタイプの歯磨き粉は、災害時に有効です。
これらは少量でも清掃効果があり、すすぎも最小限で済みます。防災グッズとして用意しておくとよいでしょう。ただし歯ブラシによる機械的な清掃も必要ですから、両方を組み合わせて使用することをおすすめします。
口腔ケア用のウェットシートも、水が使えない時の強い味方になります。
Q3:持病の薬が切れた時、歯科の薬はどうすればいいですか?
A:災害時は医療機関へのアクセスが制限されます。
普段から歯周病などで薬を服用している方は、お薬手帳を持ち出せるよう準備しておきましょう。お薬手帳があれば、避難先の医療機関でも適切な処方を受けやすくなります。
また日頃から、かかりつけの歯科医院名と連絡先をメモしておくことも大切です。スマートフォンの連絡先に登録しておけば安心です。
Q4:避難所での口臭が気になります
A:口臭の主な原因は口腔内の細菌です。
水が少ない環境でも、舌の表面を清潔に保つことが重要です。舌ブラシがあれば理想的ですが、なければ歯ブラシの背面や柔らかい布で舌の表面をやさしくなぞってください。
また口の中を潤すことも効果的です。こまめに水を飲んだり、唾液腺マッサージをしたりして、唾液の分泌を促しましょう。マスクを着用することで、口腔内の乾燥を防ぐこともできます。
Q5:子どもが歯磨きを嫌がります
A:災害時の混乱の中、子どもが歯磨きを嫌がるのは自然な反応です。
無理に磨こうとせず、まずは歯磨きを遊びの一部にしてみてください。親子で一緒に磨いたり、歌を歌いながら磨いたりするのもよいでしょう。また歯磨きができたら褒めてあげることで、子どもに達成感を与えることができます。
どうしても歯ブラシを受け入れない場合は、口をゆすぐだけでも構いません。少しずつ慣れさせていくことが大切です。
今すぐ始める防災口腔ケアチェックリスト
最後に、今日から実践できる防災準備をまとめます。
準備編:揃えておくべきもの
まず防災リュックの中身を見直しましょう。
歯ブラシは家族分プラス予備を2〜3本。旅行用の小さな歯磨き粉。デンタルフロスか歯間ブラシ。口腔ケア用ウェットティッシュ。これらが基本セットです。
入れ歯使用者は、入れ歯ケースと洗浄剤、そして入れ歯の情報メモも追加してください。お薬手帳のコピーもあると安心です。
キシリトール入りガムやタブレットも、スペースがあれば入れておきましょう。
習慣編:日頃から意識すること
防災は特別なことではありません。
日々の健康管理が、そのまま防災につながります。定期的に歯科検診を受けて、むし歯や歯周病を早期に治療しておくこと。これが最も確実な備えです。
また家族で防災について話し合う機会を持ちましょう。避難所での生活をシミュレーションし、どこで歯を磨くか、水をどう使うかを考えてみてください。
そして年に一度は防災グッズの点検を。歯ブラシの毛先が開いていたら交換しましょう。
情報編:知っておくべきこと
災害時の歯科医療提供体制について、地域の情報を確認しておきましょう。
箕面市では、災害時の歯科診療所の情報が市のウェブサイトなどで公開されています。避難所での歯科健康相談の有無なども、事前に知っておくと安心です。
また日本歯科医師会のウェブサイトには、災害時の口腔ケアに関する情報が掲載されています。スマートフォンでブックマークしておくとよいでしょう。
まとめ:防災はお口から始まる
2026年、私たちを取り巻く災害リスクは決して小さくありません。
しかし備えがあれば、そのリスクを大きく減らすことができます。防災というと、つい食料や水、懐中電灯といった目に見えるものに意識が向きがちです。でも忘れてはいけないのがお口の健康です。
災害時の誤嚥性肺炎で命を落とす方を一人でも減らしたい。
避難所での歯の痛みに苦しむ方をなくしたい。そのために私たちにできることは、今日から始まっています。歯ブラシ一本を防災リュックに入れること。定期検診を受けて、お口を健康に保つこと。
決して難しいことではありません。
うえさか歯科では、患者さん一人ひとりの口腔健康を通じて、地域の防災力向上に貢献したいと考えています。お口のことで気になることがあれば、どんな小さなことでも構いません。気軽にご相談ください。
そして防災リュックを開けた時、そこに歯ブラシがあることを確認してください。それが、あなたと家族の命を守る第一歩になるのですから。
今日という日が、あなたの防災意識を変える日になりますように。
うえさか歯科は、箕面市瀬川で皆さまの口腔健康をサポートしています。
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